2019年05月20日更新1,2一酸化ブチレン等9物質についてのリスク評価結果に基づく労働者の健康障害防止対策の徹底について
平成30 年度の「化学物質のリスク評価検討会」において、1,2―酸化ブチレン等9物質についてリスク評価を行い、今般「平成30 年度化学物質のリスク評価検討会報告書(以下「報告書」という。)が取りまとめられました。一方、1―ブロモプロパンについて、ばく露実態調査の結果、高いばく露が明らかとなったところです。
また、「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」において、酸化チタンに係る措置の検討を中断することとし、粉状物質である酸化チタンは長期間にわたって多量に吸入すると肺障害の原因となり得るものであるため、関係業界に対し注意喚起することとされたところです。
報告書等を踏まえ、下記のとおり労働者の健康障害防止対策について取りまとめましたので、下記取組の徹底をお願い申し上げます。
なお、1,2―酸化ブチレン等9物質に関する有害性情報等については別添を参照いただくとともに、報告書全文(本文及び別冊)等は厚生労働省のウェブサイトに掲載していますのでお知らせします。
記
1.1,2―酸化ブチレン
初期リスク評価の結果、一部の事業場で、個人ばく露の推定値が二次評価値※を上回ると判定されたことから、ばく露の高い要因等を明らかにするため、詳細なリスク評価を行うことを予定している。また、ヒトにおける経皮吸収が指摘されている物質であることから、経皮吸収に関する知見の収集や保護具の使用等作業実態のデータを積み重ねた上で、経皮吸収の観点も含め、リスク評価を確定させることとする。
しかしながら、当該物質は有害性の高い物質であり、かつ、経皮吸収も含め、事業場において高いばく露が生じる可能性があることから、今後実施する詳細リスク評価の結果を待たず、速やかに、労働安全衛生法(昭和47 年法律第57 号)第57 条の3に規定される危険性又は有害性等の調査を行うとともに、その結果に基づき、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32 号)第576 条、第577 条、第593 条及び第594 条に規定される措置等のリスク低減措置を講ずること。
2.ジフェニルアミン、ビフェニル及びレソルシノール
初期リスク評価の結果、個人ばく露が二次評価値※を下回り、経気道からのばく露によるリスクは低いと考えられるが、ヒトにおける経皮吸収が指摘されている物質であることから、経皮吸収に関する知見の収集や保護具の使用等作業実態のデータを積み重ねた上で、経皮吸収の観点も含め、リスク評価を確定させることを予定している。
しかしながら、当該物質は、有害性の高い物質であり、かつ、経皮吸収によるばく露の可能性があることから、今後実施するリスク評価の結果を待たず、速やかに、労働安全衛生法第57 条の3に規定される危険性又は有害性等の調査を行うとともに、その結果に基づき、労働安全衛生規則第576 条、第577 条、第593 条及び第594 条に規定される措置等のリスク低減措置を講ずること。
3.ノルマル―オクタン、酢酸イソプロピル、ジメチルアミン、ビニルトルエン及びメチレンビス(4,1―シクロヘキシレン)=ジイソシアネート
初期リスク評価の結果、個人ばく露が二次評価値※を下回り、ばく露によるリスクは低いと考えられる。
しかしながら、当該物質は、有害性の高い物質であることから、速やかに、労働安全衛生法第57 条の3に規定される危険性又は有害性等の調査を行うとともに、その結果に基づき、労働安全衛生規則第576 条、第577 条及び第593 条に規定される措置等のリスク低減措置を講ずること。
4.1―ブロモプロパン
当該物質は、今後リスク評価を行うことを予定しているが、ばく露実態調査の結果、金属製品の洗浄作業等において高いばく露が見受けられた(二次評価値※は定めていないが、日本産業衛生学会や米国産業衛生専門家会議(ACGIH)の勧告するばく露限界値を超える個人ばく露がみられた。)。
当該物質は有害性の高い物質であり、かつ、事業場において高いばく露が生じる可能性があることから、今後実施するリスク評価の結果を待たず、速やかに、労働安全衛生法第57条の3に規定される危険性又は有害性等の調査を行うとともに、その結果に基づき、労働安全衛生規則第576 条、第577 条及び第593 条に規定される措置等のリスク低減措置を講ずること。
5.酸化チタン(Ⅳ)
リスク評価の結果を踏まえ、「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」において措置の検討を行ってきたが、検討をいったん中断し、日本バイオアッセイ研究センターにおける長期発がん性試験の結果等新たな知見が出そろったところで、再度リスク評価検討会において有害性評価等を行うとされた。その際、検討を中断するに当たっては、固有の毒性の有無にかかわらず、粉状物質である酸化チタンを長期間にわたって多量に吸入すれば、肺障害の原因となり得るものであるため、関係業界に対し、改めて注意喚起するとされたところである(「酸化チタンの措置検討に係る今後の対応について」(「第1回化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」資料1)参照。)。
ついては、粉状物質である酸化チタンによる健康障害を防止するため、平成29 年10 月24 日付け基安発1024 第1号別紙「粉状物質の有害性情報の伝達による健康障害防止のための取組」に準じ、ばく露防止対策を講ずること。この場合において、日本産業衛生学会が酸化チタン(Ⅳ)(二酸化チタン)を第2種粉じんに指定していることから、当該別紙の3に掲げる日本産業衛生学会の許容濃度は、吸入性粉じんに対し1mg/m3、総粉じんに対し4mg/m3 と読み替えること。なお、「粉状の酸化チタンを袋詰めする場所における作業」については、粉じん障害防止規則(昭和54 年労働省令第18 号)第2条に定める粉じん作業に該当することから、同令に規定される措置を講ずる必要があること。
※ リスク評価において個人ばく露を評価するための基準値。労働者が勤労生涯を通じて週40 時間当該物質にばく露した場合にも健康に悪影響を受けることはないであろうと推測される濃度として、原則、日本産業衛生学会等の勧告するばく露限界値を採用している。
<参考>
・平成30 年度化学物質のリスク評価検討会報告書
・1―ブロモプロパンのばく露実態調査結果(第3回化学物質のリスク評価検討会資料2)
・酸化チタンの措置検討に係る今後の対応について(第1回化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会資料1)
<参考条文>
・労働安全衛生則
第576条 事業者は、有害物を取り扱い、ガス、蒸気又は粉じんを発散し、有害な光線又は超音波にさらされ、騒音又は振動を発し、病原体によって汚染される等有害な作業場においては、その原因を除去するため、代替物の使用、作業の方法又は機械等の改善等必要な措置を講じなければならない。
第577条 事業者は、ガス、蒸気又は粉じんを発散する屋内作業場においては、当該屋内作業場における空気中のガス、蒸気又は粉じんの含有濃度が有害な程度にならないようにするため、発散源を密閉する設備、局所排気装置又は全体換気装置を設ける等必要な措置を講じなければならない。
第593条 事業者は、著しく暑熱又は寒冷な場所における業務、多量の高熱物体、低温物体又は有害物を取り扱う業務、有害な光線にさらされる業務、ガス、蒸気又は粉じんを発散する有害な場所における業務、病原体による汚染のおそれの著しい業務その他有害な業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、保護衣、保護眼鏡、呼吸用保護具等適切な保護具を備えなければならない。
第594条 事業者は、皮膚に障害を与える物を取り扱う業務又は有害物が皮膚から吸収され、若しくは侵入して、健康障害若しくは感染をおこすおそれのある業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、塗布剤、不浸透性の保護衣、保護手袋又は履物等適切な保護具を備えなければならない。